概念整理1:キャラ
キャラクターのカテゴリーの例を挙げてみよう。
①サンリオ、ディズニーなどの子供用玩具系の商品名およびその対象。
②マンガやアニメ、ゲームなどの登場人物で、特に画像的な規定の強いもの。
③小説とくにゲームノベル、ライトノベルなどの登場人物で、②の抽象化によって得られているもの
④実世界、仮想世界問わず、人格的内面性な実存的投企の主体のオルタナティヴとして、パーソナリティを情報(行為−反応の可能性)の束によって置き換える際に用いられる、主体把握の在り方。
おそらく、概念は①から④に進むにつれて、内包がはっきりして来ているように思われる。その結果、④のような「キャラ」概念の理解に基づいて初めて、実世界の人間に対して、「あいつ最近キャラ立ってきたよね」的な言い回しが可能になる。
「キャラが立つ」という性質を形容する述語は、そのパーソナリティの情報の束が、多くの他の関係者によって把握され、その結果、他の関係者とそして本人自体も、そのような情報の束を《前提しながら》行為を行うようになることを意味する。つまり
[[
《キャラ立ち》は《キャラ》の反省的契機による《再二重化》である]]といってよいかも。
二重化そのものは、自然的人格(実存的投企の主体)をキャラによって置き換えることであり、再二重化は、そのキャラを前提して、それを含む関係性が、そのキャラの設定を前提にして再構築されなおされることを意味する。
「あんなことするなんてあの子のキャラじゃないよね」的な発言は、この再二重化された関係性に対して生じた歪みの知覚に基づいていると解釈することができる。
このような抽象的普遍的定義を介した《キャラ》という概念を理解するならば、「関羽キャラ」*1や「アムロキャラ」といった用語法を、ある種同等なものとして理解することができるようになる。関羽とはもちろん、三国史演義に出てくる蜀の国の登場人物である。しかし、
関羽的な振舞ということを、関羽であればしなさそうなことというところから理解することができる。逆にいえば、そのような理解の仕方が可能であるところにキャラが確定されていることになる。
では、単に、「頼りになる奴」とかいった形容句と何が違うのか。単純にいえば、もう少し内容が複雑なのである。たとえば、「関羽キャラ」を理解するためには、関羽と劉備とチョウヒの関係はもちろんのこと、曹操やカコウトンらとの関係も、「関羽キャラ」の中に内包的に織り込まれていることが想定されている。単に「頼りになる奴」は、三国志演技の中には五万と登場する。その中でも「関羽的」な仕方で頼りになる奴は、二人といないわけで、そこには、そんな関羽にどこまでも頼っているように見える劉備の存在が不可欠である。
つまり、一つのキャラの中には、それ以外のキャラとの関係が織り込まれていることが不可欠なのである。そうすると、「キャラ」という概念の度合には、二つの水準が存在することになる。
一つは、単に二重化されている段階での《キャラ1》であり、この定義は、カテゴリー④と一致するものである。
もう一つは、再二重化を経た後で機能し始める《キャラ2》であり、この定義のためには、④をさらに、《キャラ立ち》の定義によって限定しなければならない。そして、2000年以降のキャラもののマンガおよび小説の多くは、このような《キャラ2》の存在を意図的に有効活用している点で、それ以前のキャラものとは区別されなければならないだろう。
《キャラ1》のキャラものの例(主に80年代から90年代にかけて)
「らんま1/2」
「うる星やつら☆」
「めぞん一刻」
「機動戦士ガンダム」(一年戦争、ゼータ、逆襲のシャア)
「ファイブスターストーリーズ」
など
《キャラ2》のキャラものの代表例(主に90年代後半から最近)
「ケロロ軍曹」
「ヒグラシの鳴くころに」
「ラキスタ」
「あずまんが大王」
「一騎当千」
- 作者: 塩崎雄二
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2000/10/01
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 62回
- この商品を含むブログ (57件) を見る
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
《キャラ2》の後にくると考えられるが、他に類例を見ないのでカテゴリー化できないものとして、《キャラ3》を一応挙げておく。その例は、「もやしもん」に出てくる「螢」というキャラである。彼/彼女は、《キャラ2》的な初期値設定を持っていたにもかかわらず、ストーリーの展開によって、異なるキャラに移行することに成功している。普通、《キャラ2》的なキャラものは、設定されたキャラのポテンシャルがなくなるのと、その作品が消尽するのとは同時なのだが、それを奇跡的に?回避することに成功している。ただ、これに関しては、作者の意図したところなのか、それとも偶然の産物なのか定かではない。特に、ここにきて、「螢」的キャラの「散種」とも言うべきキャラ(白螢および黒螢)を、意図的に乱立させ、その中で、「螢」そのものの立て直しを行い、それに関連させて他のサブキャラである「及川」(おそらく初期設定としてはヒロイン)の《キャラ変更》を行おうとしているように見える点で注目に値する。
《キャラ》→《キャラ立ち(キャラ2)》→《キャラ浮動(キャラ3)》という構図が今後予想されるのかもしれないが、事態は進展中である。