「本気で行くぞ!」と「キレる」の関係
たぶん、「本気」があるということが、80年代後半から90年代前半には信じられていたと思う。「本気を出せば、こんなもんじゃないんだぞ、見てろよ」というセリフを吐いたことがある当時の小中学生は、少なくないはずだ。ドラゴンボールにその原型を求めることができるかどうかは不明だが、少なくとも、当時のジャンプ的なもの(他に、幽遊白書
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では、「本気を出せばなんとかなる」あるいは「本気を出せば話が進展する」とか「本気をだせば現状を打開できる」という方法論がとられていたと思う。
この場合、普段は、なぜかリミットがかけられていて実力は十分でてないのだけれど、そのリミットを解除すれば、俄然強くなって挽回できるみたいな構図だ。そして、この構図はある意味で、リアルなものとして信じられていたように思う。模試の後で、先生が言った一言。「お前らの実力はそんなもんなのか」
ところで、「キレる」と言われるのは、だいたい1984年以降生まれの人たちで、小中から高校生にかけての時期に言われていたように思う。確認はできていないが、最初に言われたのは1995年あたりなのではないかと思う。
思うに「キレる」とは、「本気を出す」の短縮バージョンなのではないか。「本気を出す」というのは、基本的に、日常としての制限と、非日常としてのリアルを使い分けることで、非日常を聖化することをそのおもな機能としてもっているが、「キレる」というのは、この「本気」の舞台装置そのものを加速させ、日常と非日常の区別を無効にするという機能を持っていたように思う。つまり、そもそも「キレる」というのは、「本気を出す」をリアルに感じていた世代を、前提しながら揶揄するという作用だったのではないだろうか。